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ARTICLES「日本好き」だった私の目に映る「韓国好き」

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「韓国好き」は良くも悪くもいろいろ覆い隠す

日本の大学に留学して、多くの人々に出会った。
通っていた大学は比較的韓国人留学生も多く、韓国関連の講義も複数用意され、韓国の文化に触れる機会は多かったと思う。
私が韓国からの留学生ということで、「韓国好きだよ」「K-POPが好き」と話しかけてくる同級生もいた。
自分の国のことを好きだと言われて、素直に嬉しかった。

しかし、彼らに韓国を好きになった理由を尋ねてみると、思わず首をかしげてしまうこともあった。
例えば、「日本のアイドルと違って、ダンスや歌も上手く、かっこいいから憧れる」と言われると、私は「日本にもダンスと歌がうまいアイドルや歌手はいるし、かっこいいの基準はそれぞれ違うからなんとも言えないな」と思う。

実際に韓国の人々と交流し、「日本人とは違う温かさに感動した」と話してくれる人もいた。
もちろん韓国に対して良いイメージを持ってくれるのは嬉しいし、良い人達に出会えてよかったと思いつつも、情の深さは人によるとしか言いようがない。私が冷たすぎるのだろうか。

良いイメージがきっかけとなり、実際に韓国人と親友や恋人にまで発展していることもよく見かける。このように、イメージは時に良い働きをもたらす時もある。
ただ、「韓国好き」という言葉は、肯定的にも否定的にも、いろいろなことを覆い隠してしまう。

K-POPや軽いノリの国際交流だけでなく、韓国風のメイク、コスメ、おいしい韓国料理、ドラマで接する韓国と、現実の韓国の間には大きな隔たりがあると思う。
もし韓国の一部だけを見て「韓国好き!」と思っている方がいたら、これから私が書く内容には少しがっかりするかもしれない。

ジャニーズやJ-POPにハマっていた中学時代

第二次韓流ブームがあった2010年、私は日本文化にハマっていた。
中1のころ、私は世界の美少年の写真収集が趣味だったが、その中で偶然見つけたのが日本のジャニーズだった。
それまでに見慣れた韓国の芸能人たちとは違う、ちょっと中性的な顔立ち、線の細い体、整った眉毛や長い髪型に、一瞬で魅了されてしまった。

韓国でも東方神起やKARA、少女時代は大人気だったが、私は日本のアイドルの方がかっこよくて、すごいと思っていた。
私の偏見かもしれないが、当時の韓国の歌はほとんどが恋愛や失恋に関する詞に聞こえていた。
しかし日本で流行していた浜崎あゆみは『A Song for ××』や『Moments』など、歌詞が恋愛だけではなかったため、やっぱりJ-POPはすごいと思い込んでいた。
これは日本の大学で同級生が話していた、K‐POPを好きになった理由と重なる部分がある。

なぜ自国ではなく他国の文化にハマるのか。
私の場合は、自分が自国で主流に属さない人間だと分かっていた。
だから主流の人々が好きなことはしたくないと思っていたし、みんながハマってることを追いかけたくなかった。
自分が好きなことはつまり、個性を表すことだと思っていた。自分の個性を表す手段として、文字通り「文化を消費」していたのである。

そうやって日本の芸能人やアニメ・ドラマを見ながら日本文化にどっぷりハマっていた私は、日本を「夢の国」だと勝手に思い込むようになっていた。日本の現実などは見ようともしなかったし、ただただ日本文化に触れているのが楽しくて、日本に行けば単調な人生から抜け出せそうな気がして、わくわくが止まらなかった。
実際に旅行で日本に来たときは、まさに夢心地だった。画面越しに見ていた世界が目の前に広がっていたのだから、無理もない。

再び、勝手に作り上げた夢の国を追う

NOISIEノイジー任翅亜(イム・シア)
Photo by insung yoon on Unsplash

しかし、日本での留学生活は私の想像とはほど遠かった。
ドラマで見ていた世界はあくまでも「日本人同士」の、「作り話の中の世界」だったのだ。私はその中に馴染めなかったし、国籍関係なく接してくれる数人の友人に出会うまで、いつまでたっても外国人留学生の一人に過ぎなかった。

韓流ドラマやK-POPのイメージを抱いて私に近寄ってきた同級生たちは、深いところまでは入りこめなかった。たぶん私という個人はキラキラしてなかったし、どちらかいうと韓国人っぽくない人だったから。
彼らも私もそれぞれ、「韓国人はこう」「日本人はこう」というイメージに囚われて、前に進めなかったのかもしれない。
そして、大学の外の世界はもっと厳しかった。
飲食店でアルバイトをするときは外国人労働者の「イムさん」、それ以上でもそれ以下でもなかった。

皮肉なことに、日本に来てしばらく経つと、韓国にいたころには見向きもしなかったK-POPにハマり始めた。
逆に、日本のアニメや芸能人にはすっかり興味をなくしていた。なぜだったのだろう。ただ主流に属したくない、ミーハーだからなのか。
自分でも疑問に思いながら、韓国好きな友達が言っていた「韓国が好きな理由」をいつの間にか自分の中に受け入れていた。
そうすれば、あれほど夢見ていた日本にいながら韓国の文化にハマってしまった自己矛盾と向き合わずに済んだ。

あるいは、韓国人としてのアイデンティティをK-POPアイドルや韓流俳優から取り入れたかったのかもしれない。それ以外に、韓国人として日本にいるメリットを感じられなかったからだ。
K-POPアイドルはキラキラしているし、服や化粧品は安くてかわいいし、心置きなく話せる韓国の友達もいる。
確かに、韓国好きな友達が好きでいてくれる表象としての韓国は、日本の本音と建て前に疲れてしまった私から見ても理想郷に見えた。

キラキラしたK-POPの世界に隠れた影

NOISIEノイジー任翅亜(イム・シア)
Photo by Manki Kim on Unsplash

K-POPアイドルはみんな細くてかっこよくてきれいで、歌もダンスもうまい人が多い。
韓国ドラマやK-POPアイドルは、情の深さやきれい・かっこいい人々で代表される韓国のイメージをそのまま再現している。

日本のファンに限った話ではなくて、世界にいる韓流ファンたちは韓国に対して似たようなイメージを抱いているだろう。一方で、そのイメージを保つために多くの人々が危険にさらされている。

競争をくぐりぬけるために、デビュー前から美容整形を強いられたり、自分の意思で美容整形を繰り返す。過度なダイエットをしながらも練習量は減らすことができない。デビューをしてからも弱い立場にいる人々は意見を言う機会も与えられず、過激なスケジュールで体を壊される。何か発言をすれば顔も知らない人々からの嫌がらせのコメントが寄せられる。それらに勝ち抜いた人間だけが、対価として富と名誉を得る。
いかにも新自由主義的な考え方だが、キラキラしているK-POP産業はそうやって成り立っている。

その闇を意識したきっかけは、2年前のある出来事だった。この事件は日本でも大きく報道されていたので、まだ覚えている方も多いと思う。私はK-POPグループ「SHINee」のファンだったが、人々を癒してくれる歌詞と歌声で愛されていたSHINeeのジョンヒョンが、自分の選択で戻らぬ人になってしまったのだ。

最初は誤報だと思った。
一日中関連するニュースを見ていても、まったく現実感がなかった。
テレビ番組では明るく笑い、ラジオ番組では静かな声で人々に癒しのひと時を与えてくれていた彼は、アイドルという枠を超えて一人のアーティストとして羽ばたこうとしているように見えていた。

報道が流れた後、SHINeeやジョンヒョン、あるいはK-POPに興味がなかった人たちまでも一緒に悲しんでくれた。
原因はうつ病だと報道された。でも、ここまでさせたのは会社であり、彼の暗い部分を見ようとしなかった私のせいでもあり、無限競争を前提に成り立っている韓国社会にも原因があったのではないかと思う。
韓国の芸能界から相次ぐ悲報を、もう無視することはできない。
芸能界だけではなく、韓国社会のあらゆるところが無限競争で埋め尽くされている。
そろそろ、文化も消費対象として見るだけでなく、背景にある社会問題まで考える姿勢が必要かもしれない。

イメージを乗り越えて、本当の韓国に触れてほしい

NOISIEノイジー任翅亜(イム・シア)
Photo byMark Fletcher-Brown on Unsplash

だからこそ、本当の韓国を知ってほしいと願う。

「韓国メイクかわいい」「韓国料理おいしい」「韓国の芸能人かっこいい」もありがたいし、興味を持ってくれるだけでもうれしいことに変わりはない。
でも、韓国で地下鉄に乗ってもキラキラしている人は数えるほどしかいない。ほとんどの人は疲れきった顔でスマホを睨んでいる。

アニメや芸能人を通して触れていた日本は、「日本」という響きだけで私をときめかせる力があった。でも、実際に日本で暮らしてみなければ永遠にリアルな日本はわからなかったと思う。
嫌なこともたくさんあるけれど、ここも同じく「人が生活している場所」であり、心優しい人もいれば、人を利用しようとする人もいる。様々な群像と厳しい現実がある。マスコミや文化を通して見るだけではわからない課題点が見えてくる。

私の周りには「大学の講義で初めて日韓の正しい歴史を知った」という日本人も多いが、キラキラした韓国文化に慣れ親しんでいる人にはかなり重いと思う。しかし、その隔たりを埋めるには、上の世代が否定的に伝えてきた韓国を好きになってくれた同世代の人々の力が必要だと思う。

イメージで塗りかためられた壁が崩れると、本当の課題が見えてくる。
私は韓国にいたころ苦しい現実から目を背け、新しい理想郷を求め日本に渡ってきた。しかし、日本も似たような問題を抱えていた。画一的な学校教育の弊害、官僚主義、女性の人権の低さ、貧困の連鎖、就職など、共通点を挙げ始めるときりがないくらいだ。

だとすれば、「自分の国のこういう部分が気に入らなくて、異国の文化のこういう部分に惹かれました」というのは、結局おいしいとこ取りでしかないのではないか。
流行りはいずれ終わってしまう。その前に一人でも多くの人に、本当の韓国に触れてみてほしい。

「おしゃれでかわいい韓国」で、なぜフェミニズム運動が活発になっているのか。
どうして日本のニュースでは韓国の悪い噂ばかり流れるのか。
8月15日になるとどうして靖国神社でデモが起こるのか。

文化は人々をつなげる。同時に、きれいに塗りつぶされた壁もつくる。
そこに私たちの力で小さな窓を作りたい。
最初はお互いの意外な部分に戸惑うかもしれない。でも、掘り下げていくと、必ずつながりを見つけられると思う。

韓国のフェミニズムやK-POPにも問題はある。
日本が売りにしているおもてなし文化やジャパニーズポップカルチャーも完璧ではない。

韓国好きや日本好きの人が相手の良いところだけを見て神聖化することも、韓国嫌いや日本嫌いの人が偏見を持って蔑視することも、現実を見ていない点では同じと言えるかもしれない。
お互いの文化の背景にある社会問題から学び合うことで、ありのままの姿を見て前に進んでいくことを願っている。

訂正
2020年6月23日15:00
文中「SHINEE」は「SHINee」とご指摘をいただき訂正いたしました。
ご指摘ありがとうございました。
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任翅亜(イム・シア)

韓国の詰め込み教育に馴染めず高校を中退し、日本に渡って文学・映画批評を学ぶ。『ベルサイユのばら』について卒論を書くほど日本の少女漫画が大好き。現在は外国人留学生向けのメディアを運営中。日々の小さな違和感を共有し、より生きやすい世界に変えていくことを目指します。

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